上田太一郎の相関があるかを見つける簡便法

データ活用・統計用語集,,,,アルファベット

原典(PDF)

生前の上田 太一郎(うえだ たいちろう)氏が提唱していた、相関があるかを見つける簡便法は、日本オペレーションズ・リサーチ学会の機関誌で、掲載されました。
(1997年7月号 - 42巻7号「メモランダム 相関があるかを見つける簡便法」)

https://orsj.org/wp-content/or-archives50/pdf/bul/Vol.42_07_493.pdf


相関があるかを見つける簡便法の式

上記機関誌では、相関係数を r、データ行数を n としたとき、次の不等式が成り立つとき、相関があると判定するものです。

r^2>4/(n+2)

そもそも相関の強さの判断について

相関係数は統計本などで「r(小文字の「r」:「regression」の頭文字が由来とされる可能性がある文書があるようです)」の文字で表されます。
相関係数は0をはさんで 常に-1から1までの値をとり、絶対値が1に近いほど2つの変数間でより線形な関係が強いことを示します。
 
相関係数だけを見て「0.5なら相関あり」などと判断するのではなく、データ行数も考慮して判断しようという主旨の簡便法です。
相関係数が0.4のデータが2つあったとしても、それぞれのデータ行数が10行と100行の場合とでは、意味は異なります。

これは無相関の検定でも確認することもできます。


簡便法の式の由来

有意水準をいくらにするかによって、帰無仮説が棄却されるかどうかが決まることに違和感を持った筆者が、まず重回帰分析(線形回帰分析)の変数選択において、回帰式の評価方法として、上田の説明変数選択規準(Ru)を提唱しました。それが次の式です。

Ru=1-(1-R^2 )×((n+k+1)/(n-k-1))

R2: 決定係数
n: サンプルサイズ(データ行数)
k: 説明変数の個数(列数)
 
それまでにも他の先生から提唱されてきた説明変数選択規準があり、説明変数が1つの単回帰分析に適用することで導かれています。
 
このPDFでは、「t分布表を使わず紙と筆記具でも簡単に判定できる方法」として書かれていますが、2000年当時でもExcelでt分布の検定量などを求めることも可能ではありました。
Excelの「データ分析」ツール「回帰分析」の出力結果から該当する値を参照して、簡単に求めることができることから、普及に努めた経緯がありました。
 
k=1(相関係数を求めるには、説明変数が1つ有るものとします)、Ru>0(Ruは正であることが必要です)このことから、上の簡便法の式に次のように当てはめてから考えます。

1-(1-R^2 )×(n+1+1)/(n-1-1)>0

として、分子の1+1、分母の-1-1をまとめる

1-(1-R^2 )×(n+2)/(n-2)>0

先頭の1以降を右辺に移行する

つまり

-(1-R^2 )×(n+2)/(n-2)

を両辺に加える

1>(1-r^2 )×(n+2)/(n-2)

両辺に分母の(n-2)を掛け算し、分母を取り払う

(n-2)>(1-r^2 )×n+2

両辺に(n+2)で割り算する(右辺のn+2を取り払う)

((n-2))/((n+2))>(1-r^2 )

右辺の1を左辺に移行する

((n-2))/((n+2))-1>〖-r〗^2

左辺の1を(n+2)で通分する

((n-2)-(n+2))/((n+2))>〖-r〗^2

分子を計算する

-4/((n+2) )>〖-r〗^2

両辺に −1 を掛けるため、不等号の向きが逆になり

r^2>4/(n+2)

となります。


「相関がある」という表現に注意

相関係数の強さにおいては、たとえば相関係数の絶対値が0.8以上であれば「強い(正の/負の)相関がある」のように解説しているものは多くあり、拙著でも同様に説明しています。
しかしこれは統計学の界隈で統一の指標として扱われているものではありません。
そして、統一の指標があるかのような扱いをしてはなりません。
また上述したように、同じ相関係数が0.5だったとしても、サンプルサイズの大きさによっても意味は異なります。

これは無相関の検定でも同様の考え方です。
同じ相関係数であっても、サンプルサイズによって検定結果は異なることがあります。
 
そして相関関係を確認するには、まず散布図を描き、視覚的に2変数間の関連を探ることも忘れないようにしましょう。


現在米谷が教える方針

Ru(上田の説明変数選択規準)提唱の起こりは、有意水準をいくらに設定するかによって判断が変わることへの違和感が背景にあったことがわかります。
この簡便法は「t値の絶対値 > 2」と同様に扱うことができるということを触れている点は、有意水準によらない判断というのと、どこまで整合性があるのだろうか?という気持ちがあります。
生前充分な説明を伺うべきだったことです。
 
わたくしとしてはこの整合性に関する疑問が残ったままのため、拙著やわたくしが担当する研修などではこの「相関があるかを見つける簡便法」について積極的に採り上げておりません。拙著では一切触れておりません。